闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
口を押さえて、私は塀へと倒れ掛かった。
さっき後ろにいたのに!
門の角に追い込まれ、私は身動きが取れなくなった。
ケイトがそっと手を掴み、さっき噛んだ指先をペロッと舐めた。
「殺さないよね? 私たち友達だよね? 」
キョトンとした顔をして私を見ると、彼はクスクスと笑い出した。
な、何がおかしいの?!
「そんな事しないよ。 ただ、流れる血を無駄にしたくないだけ…… 」
その笑顔があまりに綺麗で、悪魔の微笑みのようだった。
再び唇を付けると、次は血を吸われているような感覚がした。
「ね、ねぇ、まだ……? 」
痛みはないけど、指先が痺れて変な感じがしてきた。
ケイトの目付きが、少し酔ったような色っぽい表情になった。
「もういいでしょ…… 」
手を振りほどこうと思えば振り払えるはずなのに、どうして出来ないの。
「ケイト、その辺にしておけ 」
左から声が聞こえて、レイが姿を現した。
「離してやれ。 中毒になるぞ 」
するとレイは、ケイトの唇からそっと指を離した。
レイは優しい表情で私を見ると、そっと頬に手が触れた。
「ここはヴァンパイアの街、オリンゼアだ。仲間も多いが敵もいる。 気を付けるんだな 」
「え、ちょっと…… 」
「それと、まずはその靴を履いた方がいいようだ 」