闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
そう落ち着いた声で言うと、ケイトの肩を抱いて去っていった。
私は目の前に置かれていたパンプスを無言で履いた。
ヴァンパイアの街って、そんな所で1人にしないでよ。
どうしてこんな危ない所に、いつの間に私はいるんだろう。
「俺が連れてきた 」
ふと上から声がして見上げると、ルキアが黒の羽織をマントのようにふわっと広げ、塀から飛ぶようにして降りてきた。
そのステップは軽やかで、とても華麗に見えた。
「この屋敷が向こうの世界とこっちを繋ぐワープポイントになってる。 帰りたかったら帰してやるよ 」
チラッとその建物を見ると、ルキアは右腕を横に向けマントを広げた。
その状態でじっとこっちを見ている。
もしかしてこれって、漫画でよくある〝俺の胸に来いよ〟みたいな?
「そうだよ 」
「え、そうだよって…… 」
私は目をパチクリとさせて混乱した頭の中を整理をする。
今、私が思った事に返事した……よね?
口に出してないと思ったけど。
「あと5秒で消える。 5、4…… 」
「えっ、消えるって……ちょっと 」