闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
「ばーちゃんではない! モーガンじゃ! よいか樹里、心を許すでないぞ。 何をされるか分かったもんじゃない 」
ジロリと横目でケイトを見ると、モーガンはドアを開けて出ていった。
モーガンってば、心配しすぎだよ。
ため息を付いて隣を見上げると、ケイトが一点を見つめながら唇を舐めた。
唇の隙間からチラッと見える牙で、ふと気が蘇った。
私はさっきまで、この鋭い牙に身を委ねようとしていたなんて……どうかしてた。
ふと目が合って、私はさりげなく視線を反らした。
モーガンの言う通り、バカな事は考えないようにしよう。
「樹里ちゃん…… 」
そう声が耳に入ってきて、ハッと顔を上げた。
ケイトは私の指を掴むと、そっと口元に近づけた。
ちょーっ!
「やめてっ! 血、吸わないで…… 」
慌てて手を引こうとすると、グイッと胸へと引き寄せられた。
「うわっ、何する…… 」
「急にどうしたの? 変えて欲しかったんじゃないの? 」