闇のプリンス ~ヴァンパイアと純血の戦士~
「ルキアーっ! 」
ルキアは傷口を抑えながら、壁に寄り掛かった。
動きが物凄く早くて、誰も防御しきれなかったと思う。
「直に毒が舞う。 体中が麻痺に犯され、動けなくなるだろう 」
唇に付いた血を舐めると、キュラド伯爵は何事も無かったかのように再び椅子に腰を降ろした。
「そんな、どうしよう。 どうしたらいいの?! 」
頭が混乱して、何も考える余裕がない。
私ごときに何が出来る?
「落ち着け、大丈夫だ 」
ルキアはそう囁くと、ゆっくりと瞳を閉じた。
首に当てた指がふわっと光りに包まれた。
手を下ろすと、傷口はほぼ塞がっていた。
「昔エドマンドに教わった事がある 」
それは〝毒消しの術〟と言い、ヴァンパイアの毒にやりれた時に使うといいとエドマンドから教わっていたようだ。
「よかった。 もう、頭が真っ白で…… 」
涙が溢れてきて、思わずルキアに抱き着いた。
「エドマンドの奴、余計な事をしおって 」