奪い合い
「あの…どうして助けて欲しいって…」
わかったんですか、と言おうとしたが、それは陽子の手によって塞がれてしまった。
「ふふ…ごめんなさい…それは言えないわ。
っていうか、せっかく幽体離脱したんだから!」
陽子は邦華の手をとって、開いていないはずの窓から外に出た。
「うわぁッ…」
体が窓を透けたことの驚きと、目の前の景色に感動で、邦華から声が漏れた。
空を飛んでいる…
冬の真夜中なのに、寒くない。
だけど、風は感じる……
「気持ち良いでしょ!
自分で飛べるようになると、もっと気持ち良いわよ!!」
陽子は邦華の手を離した。
「え…きゃあぁああぁッッ!!!」
しかし、邦華は一人で飛ぶことはできず、そのまま叫び声と共に闇の中へ消えていった。