花よりも美しく


部屋を出て、思わず口から出てしまったため息

離れに戻り、寝室前の庭に目が止まる


「梅の木だ」

「あ・・・!」


すぐ傍に、忍が立っていた

気づいてすぐに、距離を取る


「君は、花が好きか?」

「・・・・・・はい」

「そうか。僕は嫌いだ」


忍の言葉に、月子は彼の顔を見ていた

けれど、彼の顔は嫌いなものを見ている目ではない

むしろ、遠い存在を見ているような、そんな悲しい瞳だった


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