花よりも美しく
その笑顔は、月子に向けられたものではない
まだ咲いていない、梅の花へと向けられたのだ
(こんな気持ちを、これから何度も味わうのね・・・)
忍は決して、月子を見ない
見られることのない虚無感を、月子は何度も味わうだろう
月子はそれに、耐えなくてはならないのだ
自室に戻り、月子は部屋に置かれている何枚かの着物が目に入る
華やかな着物もあれば、落ち着いた雰囲気の着物もある
着物なんて、ほとんど着た経験はない