ひかり
第1章

さようなら

両親が離婚した。
2人の間に愛がなくなった。
きっと、あたしへの愛もなくなった。
母に引き取られるも、毎日荒れ狂い家は崩壊した。
あたしの居場所はなくなった。

名前も呼ばれなくなった。
「里谷夏恋」というあたしの名前が消えた。
生きている証もなくなった。
必要とされていない自分。
どうせならもう・・・死のうと思った。
生きている理由がなかった。
あたしの周りには誰もいない。


銀色の刃先が光った。
このカッターナイフであたしは手首を切る。
深く深く傷をつければ死ねると思っていた。
でも、切れなかった。
勇気がなかった。

母はあたしが死ぬと言っても何も変わらなかった。
 「あんたなんか死ねないでしょ。」
髪をくしゃくしゃにしてあたしを睨んだ。
母の大量の香水の匂いが鼻につく。
 「お母さん臭いよ。」
あたしが涙目になって言うと、
母は自分の匂いをかいで気持ちよさそうに言った。
 「文句言うならでてけ。あんたはいてもいなくても変わらないから。」
心に突き刺さった母の一言であたしは家にも帰れなくなった。
行き場所がない。
あたしの居場所がない。


どうしてあたしはここにいるの?




< 2 / 59 >

この作品をシェア

pagetop