ひかり
次の日は朝からニヤけてカーディガンで口を抑えながら登校。
周りからの目線は冷ややかだったけど何も気にしなかった。

うちのクラスは遅刻が多く、あたしが来る頃にいたのは三波梓だけだった。
長い髪を耳に掛けて本を読んでいた。
あたしは「リアル美少女だあ」とか思いながらもあまり見ないで席に着いた。
スクバを勢いよく机に置くと三波梓はこっちも見た。
 「あ・・・ごめんね。うるさかった?」
あたしが手を重ねて謝ると彼女は首を横に振った。
・・・それだけだった。

10分たっても誰も来ない。
さすがに暇。
いつもは1人で楽しめるけど今日は三波梓がいるから気になってしまう。
もうあたしは話しかけた。
 「なーに読んでるのー?」
あたしが本をのぞくと彼女は本を閉じた。
 「ごめん!・・・見ちゃダメだった?」
彼女は小さく頷いた。
声を出さない三波梓。
彼女の声がどうしても聞きたくなった。
 「ねえ、梓って呼んでいい?」
あたしはノリで言ってしまった。
いきなり名前は引かれるかなって思ったけど、彼女は頷いた。
また、それだけ。
チャイムが鳴り教室に大量の人が入った。
時田も焦っていた。
 「おはよ。とき・・・風真!」
はじめて直接呼んだ名前。
風真はニコッと笑った。
 「夏恋おはよ!」
あたしも笑顔になった。
隣で静かに本を読んでいる梓。
周りに流されないって感じ・・・。
あたしは梓と仲良くなりたいって本能的に思ったんだ・・・。
 「梓!今日一緒に帰れる?」
彼女は大きく頷いた。
ほんの少しずつ距離は縮まっていた。
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