ひかり
家に帰ると麻那ちゃんがいた。
 「ただいまあ。」
 「おかえり」
そういえば最近麻那ちゃんと「ただいま」「おかえり」くらいしか話していない。
家族としての会話が減っていた。
やっぱりあたしたちは本当の家族じゃない・・・。
そんなの分かってるけど辛かった。
美羽と遥が麻那ちゃんにとって何よりの宝物だったんだね。


purururururururu
電話が鳴った。
麻那ちゃんが立ち上がり受話器を取った。
 「はいもしもし。可原です。」
麻那ちゃんは丁寧な対応をしたいた。
しかし次第に荒っぽくなってきた。
 「なんなんですかっ!?いい加減にしてください!夏恋はいません!」
え!?あたし?
あたしは不安になって電話機に表示されている電話番号を見た。
すると・・・
その番号はあたしのお母さんの携帯番号だった。
吐き気がしてトイレに駆け込んだ。
 「うっ・・・・・」
流してトイレを出ると麻那ちゃんはあたしに受話器を差し出した。
 「怖いよ・・・夏恋に変われって・・・」
あたしも怖かった。
でも麻那ちゃんのために出た。
あいつは何をするか分からない。
 「はい・・・」
久しぶりにあいつの声を聞くことになる。
 「もしもし!!??ねえ!もうどこにいってたのよ!」
あいつはあたしを本気で探していたようだった。
心臓がバクバクしていてそれだけで苦しかった。
 「関係ないでしょ。」
あたしはあいつに何も言わないと決めた。
これで最後にしようと・・・。
 「何言ってるの!夏恋のお母さんなんだから!帰ってきなさい!」
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