ひかり
でも、黙ってるだけではいられなかった。
警察は問い詰めてくる。
 「名前と年齢を言いなさい!」
無視をするとあたしは引っ張られた。

連れて来られた場所は交番らしき所。
 「いい加減喋りなさい。なんであそこにいたんだ?」
どんなに問われてもあたしは返さなかった。
声を出さなかった。
 「お父さんお母さんは?」
体が敏感に反応した。
熱くなって破裂した。
 「・・・・返してよ!あたしの全部返してよ!警察でしょ?お父さんとお母さんを返し てよ!家族を・・・・帰してよっ・・・。」
顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにして訴えた。
取り乱れてしまった。
でも警察は冷静だった。
やっぱりあたしの事なんかどうでもいいんだ。
 「名前は?」
警察の声が静かに響いた。
あたしは心を落ち着かせて久しぶりにこの名前を口にした。
 「・・・・・・里谷夏恋。」
なぜか心が軽くなった。
 「里谷夏恋さん。住所を特定することができたのでご家庭に連絡します。」
名前がくすぐったかった。

 「「はい」」
電話越しにお母さんの声が聞こえる。
あたしは吐きそうになり口を抑えた。
 「あなたの娘さんを補導しました。早急に迎えに来てください。」
警察の声が全身にしみる。
お母さん・・・来るはずないのに。
期待している自分がいるのが恥ずかしかった。
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