ひかり
あたしは怒られている意味が分からなかった。
捨てたのはあいつ。
あたしは捨てられたのに・・・。
どうして今更そんなこというの?
帰るわけ無いじゃん。
 「絶対いや。」
あたしはできる限り気持ちを抑えた。
本当は今すぐにあいつのところに言って大声を出して怒鳴りたかった。
でも、それはできないから我慢するだけ・・・。
 「夏恋がいなきゃ困るのよ!お願いだから・・・」
あいつは泣き出した。
電話越しにだが明らかに泣いていた。
でもそれが本当の涙だなんて思っているわけは無い。
どうせ心は・・・
 「あたしがいなきゃお金を稼ぐ人がいないからでしょ?」
こんな理由にちがいがなかった。
 「ち・・・・っちがっ・・・・」
あいつは電話を切った。
あたしはあいつにとってお金。
金と同じ。
いや・・・金以下。
 「あはははっはっはっは!!!」
あたしは笑った。
またあたしを利用してきたあいつ。
いい加減もう我慢の限界だった。
一度忘れ去った記憶が一気によみがえる。
あの日裏切られたことも・・・。自殺未遂も・・・。
 「あたし・・・あいつの子供なんだよ!血繋がってんじゃん!汚いよ・・・」
あいつの子供ってだけで恥ずかしくなった。
もう十分嫌な思いしたと思ってた。
これ以上地獄に落ちないって思ってた。
それくらい・・・どん底に落ちたって思ってた。
なのに・・・神様は限界まであたしを突き落とす。
不幸にさせる。
 「夏恋は汚くなんか無いよ。」
麻那ちゃんがあたしを抱きしめた。
麻那ちゃんだってあたしのこと恨んでる。
家族を奪ったんだから・・・。恨んでないわけがないんだ。
あたしは調子に乗っていた。馬鹿だった。
もう誰も信じられない。


あたしはこの日からみんなと距離をとった。
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