ひかり
知ってるよ。
みんなのせいじゃないってこと。
でもね、苦しいんだよ。
人が怖いの。
逃げ出したいよ・・・。





吐き気はしばらくおさまらなかった。
2日3日あたりは数回嘔吐。
あいつのことを考えるだけで気持ち悪くなる。
家族だったのに・・・。
麻那ちゃんとも距離を置いてから家にいる時間も減った。
学校にもまともに行かずにゲーセンで暇つぶしをしていた。
ここはうるさいからあたしの存在を隠してくれるんだ・・・。
お金はあまり使わなかった。
ただ座っていただけ。
たまにアイスを買ってゆっくり食べたり。
とにかく自由。
 「あ・・・。」
聞き覚えのある声があたしの後ろから聞こえた。
後ろを振り向くと、梓がいた。
あたしは何もしないで椅子を立った。
軽蔑されたんじゃないかって思った。
早歩きで歩いていると腕を掴まれた。
温かい指先を取って、振り払った。
 「ごめんね・・・。こんなところにいたら危ないよ。」
下を向きながら梓の小さな声が響いた。
 「危なくないよ。ほっといて。」
立ち去ろうとするとまた掴まれた。
 「あたし夏恋ちゃんに会って変わろうって思えたから。夏恋ちゃんも変わってくれないかなあ?あたし頑張るから。」
何を伝えたいのかは分からないけど、あたしに悪いことをして欲しくないっていってるような気がした。
 「・・・・・・・・・・わかんないよ。」
あたしは頷くことはできない。
誰も信じられないから。
でも、心はほんの少し動いたんだ。
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