ひかり
 「お母様いらっしゃるよ。これからは夜遅くに出歩いてはダメだからね。」
警察がほっとしたように言った。
でもあたしはほっとできない。
来るわけないじゃん・・・・。
そう思うしかなかった。

しばらく待つとお母さんが来た。
結構自然に時間が流れた。
 「夏恋ごめんね。お母さん・・・馬鹿なことした。夏恋に辛い思いさせて、なんて最低なことしたんだろうって後悔したの。もう・・・・許して。」
お母さんは泣きじゃくった。
あたしはお母さんの涙に心を動かされてしまった。
 「いいんだよお母さん。」
強く強くお母さんを抱きしめた。
お母さんの温もり・・・・。
久しぶりだった。
でもなぜだろう。
あたしは不思議な気持ちになった。
だんだんとお母さんの温もりを感じなくなった。
お母さんは動揺なんかしていない。
あたしの心配なんかしていない。
そんな思いが伝わってくる。

・・・・また裏切られるんだ・・・

そう思うと涙も止まった。
 「夏恋?」
お母さんは焦ったように言った。
やっぱりそうじゃん。
お母さんはあたしのこと、ちっとも愛していない。
 「もううんざりだよ。裏切られたくないんだよ!!!」
交番を飛び出した。
 「夏恋!!!!!!!!!」
お母さんの小さな叫び声が耳に響いた。
本当は戻ってきてほしくないくせに期待させるなんて・・・どうして?
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