青春音楽





「あ、出欠表持ってくんの忘れた」



「家から?」



「ちゃうよ。何でそんなもん持って帰んの。
職員室から持ってくんの忘れたの」



部員の出欠確認は部長の仕事だ。



「今日なんかちょっとしかおらんやん」



麻里は人数を確認するように部屋を見渡した。



「それでもせなあかんの。
私職員室行ってくるけど麻里も行く?」



「嫌。階段めんどいやん。
いってらっしゃい」



麻里はあまり友達に対して、いや人間に対してべたべたしない。



人間誰もが自分が一番かわいいものだと思うが、大概それを全面的に出さない人の方が多い。



だが麻里はそれを隠さない、むしろさらけ出している。



だから分かりやすいといえば分かりやすいが、自己中丸出しなので、麻里に近寄る人は少ない。



顔は美人なのに、その性格のおかげで、陰では『ナルシスト姫』なんてあだ名がついているらしい。



ぴったりだ、と思って麻里にこの事を言ってみると、誰がナルシストやねん、と怒っていた。



自己中と言っても怒るわけでもないのに、ナルシストと呼ばれるのは嫌いらしい。





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