春夜姫

 むかしむかし、森に囲まれた美しい国がありました。その国の王様とお后様には、長い間子どもがありませんでした。


 王様は神様に願いました。
「神様、神様。どうかわたし達に子どもをお授け下さい」

 神様は言いました。
「お前の望みは叶えられないが、もし子どもが生まれたら、その子には誰からも愛されるような優しい心をあげよう」

 お后様は妖精達に願いました。
「妖精達、妖精達。どうかわたし達に子どもをお授け下さい」

 妖精達は言いました。
「あなたの望みは」「叶えられないけれど」「もし子どもが生まれたら」「その子には誰からも愛されるような」「美しさをあげましょう」

 王様もお后様も、優しい心と美しさを持った子どもが授かるのを待ちましたが、その気配は一向にありませんでした。
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