春夜姫
魔女の目がいつかと同じようにぎらりと光りました。魔女は杖をかかげ、恐ろしさに泣き叫ぶ春夜姫の美しい髪を掴み、その喉元に向けて杖を振り下ろしました。春夜姫の喉がまばゆく光り、それが収まると魔女は声高に笑いました。
「この瓶にお前の声が入っている」
杖を持つ手とは反対の手に、小瓶がありました。
「七年待ってやろう。七年の間に、この瓶を開けることが出来たなら、お前に声を返そう。出来なければこの小瓶を悪魔に渡そう。悪魔に渡してしまえばもう二度とお前に声は戻らない」
急に風が吹いて、明るい部屋もお茶もお菓子もどこかへ消えました。魔女も風と共に消えました。春夜姫は小瓶を手にしたまま、あまりの悲しみに泣きました。声がなければ、話すことも歌うこともできません。泣いても泣いても、春夜姫の喉からはひゅうひゅうと音がするばかりでした。