春夜姫
国中が大騒ぎになりました。蓋は押しても引いても開かないし、この小瓶はどんなに高いところから落としても、どんなに熱い火で焼いても割れません。傷一つつきませんでした。
春夜姫の顔からは笑顔が消え、代わりに涙がいつも両の頬にありました。王様もお后様も嘆きました。家来達も、兵士も、お百姓さんも、小鳥も、鹿も、この国の全てのものが悲しみにくれました。
王様は、小瓶を開けることが出来た者は春夜姫と結婚することができる、というお触れを出しました。国の外にもそのお触れは知られていき、たくさんの人が小瓶を開けようとしました。しかし、誰も開けることはできません。
年月は虚しく過ぎて、春夜姫はますます美しくなりました。周りの者を心配させまいと作る笑顔はとても愛らしいものでした。そしてとても悲しいものでした。
この冬に積もった雪が溶けたら、春夜姫は十七歳になります。