春夜姫
 弟分が、旦那様にさっと耳打ちします。旦那様は来ていた客に愛想良く挨拶をして、足早に店の奥へ向かいました。

「でかした!」
 旦那様、もとい一味の親分は、鳥籠の中の夏空を見るなり両手を上げて喜びました。

「この羽の色、艶、輝き。あの猟師のガキが持っていたのと同じだ」
「へい」
「虫殺しの実を知らないような、とんだ間抜け鳥だ」
「へい。おいら達が捕まえる時も、低い枝に止まったんです。こいつぁ本当に間抜けな鳥です」

 夏空は何も言わず、じっとして話を聞いていました。一味は南の国で商売をした後、魔の森を迂回して北の国に帰ってきたようです。あの猟師、とはクロのご主人で、夏空の羽は坊やが首から提げていたらしく、それがこの商人の目に留まったのです。

 南の国で商売をしているので、青い羽の価値は知っていたはずです。夏空の背格好など上手く聞き出したのでしょう。子分を馬に乗せて、親分は夏空を探させたのです。
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