春夜姫
 それからもう、十日が経ちました。夏空は相変わらず籠の鳥です。親方は金づるの青い鳥を死なすまいと毎日欠かさず餌と水を置き、暖炉に薪をくべて部屋を暖めました。

 夏空は出された味気ない餌をついばみます。人間の姿に戻り、国へ、父王にの元へ帰る。そのためには生き延びねばなりません。

 夜の冷え込みは夏空の味わったことのないもので、窓の外では雪が毎晩降り積もります。が、朝になって日が出ると、王城から何人もの魔法使いと兵隊が繰り出されて雪を片付けていくのです。

 今日は、午後はすっかり良い天気で、夏空は暖かい部屋にいてうつらうつらしていました。親方は店で客の相手をしています。

「夏空よ」

 夢現に、夏空は自分を呼ぶ声を聞きました。

「儂は言ったな。どんな時でも必ず解決の道はある、お前さんの好きな歌でも歌うことじゃ、と」
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