春夜姫
さて、それから少し後のことをお話ししましょう。
人間に戻った夏空の王子と声を取り戻した春夜姫は、神様の前で将来もずっと共にいることを誓いました。二人きりの神殿で手を取り合い、誓いの口付けを交します。
辺りが光に満ちました。二人が閉じた瞼をゆっくり開けると、そこにはあの白いひげのおじいさんがいました。
「おじいさん……」
夏空は眩しそうにおじいさんを見ました。
「あなたは、」
春夜姫は不思議そうにおじいさんを見ます。
「初めてお会いしますのに、とても懐かしい気持ちです」
おじいさんは春夜姫の髪を撫でました。
「姫とは、初めて顔を会わせたのう。儂に赤子を授ける力があったのなら、姫も、姫の二親も、あのような苦しみを味わうことはなかった」
と、すまなそうに眉毛を下げました。