春夜姫
翌日、夏空の話を聞いた北の国の王様は、すぐさま魔法使いに命じ、魔法の長靴を用意させました。
「しかしながら、夏空よ」
王様は心配そうに夏空の手を取りました。
「姫がお前と行きたいと言っている。私たちの大事な一人娘なのだ、声が戻り、積もる話もある……どうかお前から、留まるよう諭してくれないか」
聞いていた春夜姫は、いたずらっぽく笑いました。
「いやよ、お父様」
「春夜」
「お父様、私は民に会いたいのです。」
姫の瞳には、今は、真心だけが映っています。
「多くの民が、私のために、悩み、力を貸してくれました。私は彼らに会ってお礼を言いたいし、まず、この姿を見せたいのです。お父様」
そこまで言われては、王は許すしかありませんでした。王が首を縦に振ると、姫は飛び上がらんばかりに喜びました。