春夜姫
夏空が囚われていたいんちき宝石店を通り過ぎ、街道を抜け、田舎道になり、振り返るとお城は遥か彼方にあって、前方にうっすらとあの森が見えるようになりました。真っ白い中にぽつりぽつりと家があり、道だけは雪が除いてあります。
ワン、と犬の声がして、二人はそちらを向きました。白い雪原の向こうから、黒い点がこちらへ向かってきます。
「あれは」
夏空よりも先に、春夜姫が先に駆け出しました。が、外套の裾にもつれて転びそうになります。夏空は春夜姫の腕を掴むと、そのままぐい、と姫を抱き上げました。
「夏空様、下ろしてくださいませ、自分で行かれます」
「姫の駆け足は危なっかしい。でも急ごうとされている。それに、僕もあの犬に早く会いたいのです。だったらこれが一番早いでしょう」
真っ青な瞳をいたずらっぽく潤ませて、夏空は春夜姫に笑いかけました。
「……重くありませんか」
姫は顔を真っ赤にして聞きました。夏空はくすくす笑いました。
「心配されるなら、僕をしっかり掴んでください。貴女は羽が生えているかのようだ。僕の元から飛んでいかないように」
春夜は夏空の服をぎゅっと掴みました。そして、夏空が駆ける確かな振動に身を委ねました。
ワン、と犬の声がして、二人はそちらを向きました。白い雪原の向こうから、黒い点がこちらへ向かってきます。
「あれは」
夏空よりも先に、春夜姫が先に駆け出しました。が、外套の裾にもつれて転びそうになります。夏空は春夜姫の腕を掴むと、そのままぐい、と姫を抱き上げました。
「夏空様、下ろしてくださいませ、自分で行かれます」
「姫の駆け足は危なっかしい。でも急ごうとされている。それに、僕もあの犬に早く会いたいのです。だったらこれが一番早いでしょう」
真っ青な瞳をいたずらっぽく潤ませて、夏空は春夜姫に笑いかけました。
「……重くありませんか」
姫は顔を真っ赤にして聞きました。夏空はくすくす笑いました。
「心配されるなら、僕をしっかり掴んでください。貴女は羽が生えているかのようだ。僕の元から飛んでいかないように」
春夜は夏空の服をぎゅっと掴みました。そして、夏空が駆ける確かな振動に身を委ねました。