~Snow White~『最終巻』
雪湖はなかなか戻らなかったが

稔にはここに戻ってくるという
確信があった。



電話が鳴った。

ヒツウチ と書いてあった。


受話器を取って稔は無言のままでいた。


「雪湖?雪湖か?」

智久の声だった。


「雪湖なら行かないよ。」

智久が声を失った。


「あ・・・あの・・・・」



「君に裏切られたって泣いているよ。
昨日、今井くんを
抱いてたんだってね。
雪湖はショックを受けているよ。」


「なぜ?華の・・・・」
智久は頭が真っ白になった。


「今井くんから連絡をもらったんだ。
君が雪湖を奪おうとしてるって…ね。
でも君は雪湖を奪おうとしてるのに
彼女を抱いていたんだろう?
女は怖いよ・・・・・
なんでもするから・・・・
雪湖にそのまま伝えたよ。
ご丁寧に写メまで送ってくれてね。
ありのまま雪湖に伝えておいた。」


「雪湖は?」


「話せる気分じゃないだろ?
裏切られたんだから。
自分以外の人を抱いた男を
信じるには雪湖は潔癖すぎるからな。
とにかく雪湖はもう
君のところには絶対行かないよ。
あきらめてくれ。」


受話器をおいて
稔は涙が流れるほど

笑い続けた。


ようやく・・・・
雪湖を手に入れて

智久を潰してやった。

「アイツの顔が見たいもんだな~」

竜平を想像してさらに
おかしくなった。
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