~Snow White~『最終巻』
竜平はその日家に帰れなかった。


そのままホテルに泊まり
何度も何度も
二通の遺書を読み返した。


「おじさまが預かって下さい。
私には必要ないから
捨ててくれてもかまいません」



雪湖は何もかも
あきらめた顔をしていた。


雪湖に
娘に何をしてやれるんだろう


竜平は考えていた。


初めて家に来た小さい雪湖を
なぜ可愛がってやらなかったのか


「パパ」

そう自分を呼んだ雪湖を
抱き上げてやれなかったのか


洋平に対しての嫉妬に
動かされて
人間としての優しさが欠落した
自分を恥じていた。


今さら遅い・・・・・

雪湖をあんなに傷つけてしまった。
今日までせめて今日まで
手元に雪湖をおいてあげていたなら
状況は変わっていたかもしれない


後悔ばかりが
竜平を責め立てた。
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