~Snow White~『最終巻』
「愛してるって思うなら
躊躇していてはダメよ。
この世の中で愛する人と人生
添い遂げられる人間は少ないのに……
人生は一度っきり
素直になりなさい。
きっと後悔するわ。」



女将はにこやかにそう言った。



「私たち夫婦は駆け落ちして
この地に逃げてきたの。
逃げるまでは葛藤の毎日だったわ。
でもね…
後悔してないわ。
そう思える人生で本当によかったって
この先どっちが先に天国に
行くかも知れないけれど
幸せだって毎日そう思って来れた。
いい人生だったって……
トモさんは誠実な人だから
あまり悩ませないであげてね。」




女将は立ち上がって


「何かあったら呼んでくださいね。
うちの夕食は美味しいですから
楽しみにしててね。」



「ありがとうございます。」



女将が去った部屋で
もう一度窓のそばに近寄った。


美しい海が輝いていた。
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