ホストの貴方
私は急いで支度を終えると、兄に何も告げずに家を出た。
そしてその日、ドアを開ける前にクラスの様子がいつもと違かったのは、すぐに理解出来た。
「な、奈緒っ!」
私がドアを開けたのと同時に、私の視界いっぱいに茜の顔が広がった。
「な、なに?」
「ほ、ほらっ!あれ見てよ!」
茜が興奮気味に、私の前で手をバタバタさせて言った。
「え…あれって…。」
長いストレートのブロンドの髪の毛を、綺麗に盛り付けたいわゆる『盛り髪』に、青く光るピアスと、それがよく映える白い肌。
そして、綺麗に空いた胸元から見えたのは、クロスのネックレス。
誰が見ても騒ぐようなルックスだ。
でも、どんだけ周りが騒いでいても、決して動じずに無表情。
そんな彼が、机の上で足を組んで座っていた。
そう、私の席の隣に。