ホストの貴方


チャイムが鳴って、みんなが席に着いた時、彼がいないのに気付いた。

「おい、高橋はどこ行った?」

授業の担任が呆れたように吐き捨てた。

「しょうがねーなー、おい、香川!ちょっと保健室まで見てきてくれ。」

「な、なんで私が。」

「隣だからに決まってんだろー。」

担任にそう言われ、仕方なく私は自分の席を立った。

教室を出て、丁度A校舎から、保健室や図書室があるB校舎の廊下を歩いている時、校舎内の自販機の横に座りながら、片手に缶コーヒーを持ってタバコを吸っている不登校の姿があった。

「校内禁煙ですよ。それよりあなた、未成年ですよ。」

私がそう言うと、チラッと目だけを私に移した。

「なにあんた。」

「先生が探して来いって。」

「ほっとけよ。」

「じゃないと私が怒られる。」

「そんなの知らねぇよ。」

「…じゃあ、私もサボる。」

そう言って、私は彼の隣に腰をかけた。


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