ホストの貴方
「私ね、ぶっちゃけこんなに男の人と話したの初めてなんだ。」
「あっそ。」
「昨日は、友達の彼氏のホスト殴っちゃったしさ…。」
そう言った瞬間、彼の目つきが変わったのが分かった。
「なんで。」
「え、だって女とラブホで…。」
「あっそ。」
「あっそって…。」
「彼女も彼女なんじゃない?ホストなんてそうゆうもんだと思って、付き合ってたんでしょ?」
「それは…。」
少し冷たくなった彼の口調に、私は戸惑った。
「つか、高橋じゃなくて、葵って呼んでくれる?」
「え…あ、うん。」
「あんた。」
「なに?」
「名前は?」
「香川…奈緒。」
「あっそ。」
「なにソレ。」
「聞いただけだけど?」
「意味分かんない。」
「じゃ、そろそろ教室戻るかな。」
葵はそう言うと、吸っていたタバコを床に押し付けて、空いた缶コーヒーの中に押し込んで立ち上がった。