ホストの貴方
「ごめん。」
しばらくして私は葵から離れた。
「別に。」
葵は私の乱れた服を直してくれた。
それでも相変わらずの無表情は変わることは無かった。
「葵…訂正する。」
「は?」
「私達の出逢いは必然でも運命でも無いよ。」
「は…なに急に。」
「偶然だよ。だって葵が私を見つけてくれたのも偶然じゃない?」
「まじ、変な女。」
「ありがとね。」
「別に。」
私がそう言うと、葵は少し照れたような顔をした。
その顔が、なぜか私だけが知ってるような気がして、嬉しかった。
そう、この出逢いは偶然。
偶然に偶然が重なった運命。
そして私はきっと、不覚にも、
葵に一目惚れしたのだろう。