ホストの貴方
怒りと痛み
学校まで行く途中、私と葵は一度も話さなかった。
だけど、葵はまるで私を見守るかのように、ずっと私の後ろを歩いていた。
教室に入って、みんなが騒いだのは、想像がついていた。
「え、なになに?なんで香川さんがあの高橋くんと一緒に?」
「ま、確かに香川さん可愛いけど…。」
「えーズルーい。」
など、次々とクラス中のみんなが口を揃えて言うもんだから、なんだか優越感。
「もー奈緒ったら!抜け駆け~?」
茜が側にきて茶化してくるもんだから、私はつい顔を手で覆ってしまった。
「ち、違うよ、付き合って無いし!」
「ねぇ。」
その時、隣にいた葵の口が開いて、茜の顔を見た。
葵にいきなり話し掛けられた茜は少し戸惑っている。
「お前が、茜?」
「え?」
「あ、ちげーな、お前の名前なんて言うの?」
私は葵は急に『何言ってるんだろう』としか思えなかった。
「桜木茜。」
その言葉に何を思ったのか、葵の顔と口調が一気に変わった、
「ちょっと来てくんね。」
そう、その顔と声はとても冷たかった。