ホストの貴方


そして最後にこう付け足した。

『奈緒はここで待ってて。』と。

教室を出て行く二人を見て、とても待っている気にはなれなかった。

悪いとは思っていても気になって仕方が無かった。

知らず知らずの内に、私は葵と茜の後を追っていて、二人はあまり人気の無いB校舎に向かって行った。

葵が周りを気にしながら歩いていて、茜は気まずそうに後ろをついて歩いて行った。

そして二人が立ち止まったのが見えたと思ったら、何かを話し始めた。

あまり周りに警戒していないのか、そこまで小さくない声は、私の耳によく伝わってきた。

「お前の元彼氏。」

「えっ?」

「夏川優哉、知ってるだろ。」

「あ、うん。」

「アイツ、俺の仕事場の先輩ね。」

葵の言葉に私は声が出なかった。どうして?先輩だなんて一言も言ってなかった。むしろ知らないような言い方しか、してなかったのに。


< 44 / 54 >

この作品をシェア

pagetop