ホストの貴方
そして最後にこう付け足した。
『奈緒はここで待ってて。』と。
教室を出て行く二人を見て、とても待っている気にはなれなかった。
悪いとは思っていても気になって仕方が無かった。
知らず知らずの内に、私は葵と茜の後を追っていて、二人はあまり人気の無いB校舎に向かって行った。
葵が周りを気にしながら歩いていて、茜は気まずそうに後ろをついて歩いて行った。
そして二人が立ち止まったのが見えたと思ったら、何かを話し始めた。
あまり周りに警戒していないのか、そこまで小さくない声は、私の耳によく伝わってきた。
「お前の元彼氏。」
「えっ?」
「夏川優哉、知ってるだろ。」
「あ、うん。」
「アイツ、俺の仕事場の先輩ね。」
葵の言葉に私は声が出なかった。どうして?先輩だなんて一言も言ってなかった。むしろ知らないような言い方しか、してなかったのに。