ホストの貴方


バシッ。

茜の返事よりも先に、私の手は無意識に優哉の頬を叩いていた。

「最低、最低、最低!有り得ない!あんたなんかと茜を付き合わせてたら、こっちの身が持たないよ!なんで、男って…体体体体って!」

「…ってぇ。」

「奈緒…。」

「もう、別れて!最低!」

私は、茜の手を取って、スタバを出た。

「奈緒…ありがとうね。」

途中で茜が私に言った。

その顔は、泣いているのに無理して笑っているような気がして、私の心が張り裂けそうになった。

「き、気にしないでよ。」

「…でも、うれしかったよ!」

「はは、照れるって。」

「いつからだったかな…急に優哉が女遊び激しくなったの…。」

「…。」

いきなり語り始めた茜の目はほとんど虚ろにまばたきをした。

「しょうがないよね…だって、優哉はホストだったし…そんなの知ってたくせに…自分ばっかり優哉を求めて…ズルいよね…ホントに。」

茜はスッと眉を下に下げて下を向いた。

「ズルいのは男だよ。」


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