[短編]彩華
夜が明けて、朝が訪れようとしていた。

眠い眼をこすりながら、口紅を落とす。

今朝はとても寒い。

さっき外を見たら、夕べは雪が降ったようだった。

地の色が隠れるくらいに積もった雪の上に、それは朝日を浴びながら、まだちらちらと少しだけ降っていた。

寒くなると、人肌が恋しくなるのは自然の摂理らしい。

冷え込みが厳しいこの頃、遊廓への客足は減るどころか、むしろ増えていた。

商売繁盛。

嬉しいこと限りないが、流石に少しばかり疲れる。

朝は、私たちにとっての夜だ。

笑顔の仮面を外し、一息着いた。

「…きょう。」

背後から声がした。

見れば、くちなはが、部屋着なのか可愛らしい着物に身を包んで立っている。

「どしたぁ?」
「お客さんだよ。」

こんな時間に、客?

非常識にも程があるというものではないか。

夜は明けた。

うちの店はとっくに終わっているし、私はこれから疲れた躰を癒そうと言うのに。
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