[短編]彩華
さく、さく、
歩く度、乾いた雪を踏みしめる音がする。
誰もいない。
まだ少し雪がちらつく表で、私は一人立ち尽くした。
はて、彼こと紅珠郎は帰ってしまったのだろうか。
それとも、このわずかな時間の間に何かあったのだろうか。
はたまた、彼なんて最初から来ていなかったのだろうか。
くるりくるりと、忙しく頭を働かせてみる。
しかし、だんだんにそれらが無駄な妄想茶番に過ぎないのが分かって来て、私はため息をついた。
男の一人、なんだと言うんだ。
全くもって自分で自分が分からなくなる。
毎日何十と言う男を見ている。
男の扱い方も大体知っているつもりだし、商品として愛される為に必要だと思われる教養は、身につけているつもりだ。
どうしてだろう。
どうして、彼はこんなにも私の心を掻き乱すのか。
あの男の深紅の瞳に見つめられると、何とも形容し難い、むずむずとした気持ちになる。
仮に、今訪ねて来たのが金持ちの佐久間や小本山だったら…いや、その二人だったとしても、私は走ったりなんかしただろうか。
歩く度、乾いた雪を踏みしめる音がする。
誰もいない。
まだ少し雪がちらつく表で、私は一人立ち尽くした。
はて、彼こと紅珠郎は帰ってしまったのだろうか。
それとも、このわずかな時間の間に何かあったのだろうか。
はたまた、彼なんて最初から来ていなかったのだろうか。
くるりくるりと、忙しく頭を働かせてみる。
しかし、だんだんにそれらが無駄な妄想茶番に過ぎないのが分かって来て、私はため息をついた。
男の一人、なんだと言うんだ。
全くもって自分で自分が分からなくなる。
毎日何十と言う男を見ている。
男の扱い方も大体知っているつもりだし、商品として愛される為に必要だと思われる教養は、身につけているつもりだ。
どうしてだろう。
どうして、彼はこんなにも私の心を掻き乱すのか。
あの男の深紅の瞳に見つめられると、何とも形容し難い、むずむずとした気持ちになる。
仮に、今訪ねて来たのが金持ちの佐久間や小本山だったら…いや、その二人だったとしても、私は走ったりなんかしただろうか。