[短編]彩華
愛や恋なんて知らないし、いらない。

私は売り物だし、私と共に過ごす一時を、客に楽しんでもらう為だけの遊女なのだ。

それこそそんな物、知るだけ無駄なことである。

恋の為に破綻した同胞を何人も知っている。

あんな風になるくらいなら、知らない方がましだと言うもの。

そう思っていたし、今だってそう思っている。

だが、この有様は一体何だろう。

私は、こんな気持ち、知らない。

薄暗い空は、まだちらちらと雪を落としていた。

私は、ゆっくりと踵を返し、ゆっくりと振り返って(やっぱりいない。)からりと、冷たい引き戸を閉めた。
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