[短編]彩華
人は、私達の事を美しい蝶々のようだともてはやす。

美しく飾った独りぼっちの蝶は、冷たい雪の下に出たら、凍えて死んでしまうとばかり思っていた。

「紅珠郎さんの掌、暖かい。」
「…俺の掌は、人殺しだ。」

それでも。

「…、暖かい。」

呟いた吐息は、すぐに白く化粧して、空に溶けて行った。

行き先なんて決めずに、時間なんか気にせずに、着物なんて、化粧なんて、人の目なんて、私が何者かなんて、考えもせずに。

雪化粧した道を、私達は手をつないだまま、二人して、ずっとずっと歩いて行った。

孤独な蝶々なら、きっと

凍えてしまうのだろうが。
< 15 / 30 >

この作品をシェア

pagetop