[短編]彩華
春の空気を桃色に染めながら、彼らは愛しい人の元へ飛んで行こうと言うのか。
永い時を掛けて、美しく咲いて。そうまでして見て欲しかったその人の元に。

「ずっと、待ってるから…。」

私達は口付けを交わした。長さを変え、深さを変えて、何度も、何度も交わした。

ひらひら
ひらひら

紅に
桃に

舞っては落ち
咲いては朽ち

蝶々のように

嗚呼
私にも

翼があったら

何時だって飛んで行こう
愛しいあなたの

その元へ───
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