[短編]彩華
その光景は、薄明かりの下で消え入りそうに誘う、白く儚げで妖艶なくちなはの姿と、酷く不釣り合いだった。
「…大丈夫かよ。」
私の声が響く。
くちなはが顔を上げた。
色香が零れる。
女の私でも、思わずぐっときてしまう程。
「やりすぎじゃねぇのかぁ。ちぃと。」
私は、放ってあった着物を取って、まだ震えている彼女の肩に掛けてやった。
「嫌いなんだろぉが、こういう遊びは。」
「…余計なお世話だよ。」
「早死にすんぞぉ。」
「かまわないさ。」
拗ねたように呟いて、くちなはは涙を拭った。
「早く抜け出したいのさ、この地獄からね。」
くちなはは、藍色の瞳だけでこちらを見上げた。
売られてきたばかりの、異邦の、娘。
彼女はすぐに顔を伏せると、横を向いて苦しそうに咳こみ、血の交じった物を吐きだした。
私は、背中を擦ってやって、窓を開けてやった。
四角い夜の中に、月が、見えた。
私たちは地獄から抜け出す為に、地獄を重ねるのだろうか。
地獄を重ねたら、いつかそこに光を見るのだろうか。
くちなはの泣き声が聞こえる。
夜が明けて、また夜が来たら、私はまた美しく着飾って客の前で笑う、哀れな道化になるだろう。
「…大丈夫かよ。」
私の声が響く。
くちなはが顔を上げた。
色香が零れる。
女の私でも、思わずぐっときてしまう程。
「やりすぎじゃねぇのかぁ。ちぃと。」
私は、放ってあった着物を取って、まだ震えている彼女の肩に掛けてやった。
「嫌いなんだろぉが、こういう遊びは。」
「…余計なお世話だよ。」
「早死にすんぞぉ。」
「かまわないさ。」
拗ねたように呟いて、くちなはは涙を拭った。
「早く抜け出したいのさ、この地獄からね。」
くちなはは、藍色の瞳だけでこちらを見上げた。
売られてきたばかりの、異邦の、娘。
彼女はすぐに顔を伏せると、横を向いて苦しそうに咳こみ、血の交じった物を吐きだした。
私は、背中を擦ってやって、窓を開けてやった。
四角い夜の中に、月が、見えた。
私たちは地獄から抜け出す為に、地獄を重ねるのだろうか。
地獄を重ねたら、いつかそこに光を見るのだろうか。
くちなはの泣き声が聞こえる。
夜が明けて、また夜が来たら、私はまた美しく着飾って客の前で笑う、哀れな道化になるだろう。