― 君 色 星 ―
「…長い間、寒いのに話してくれてありがとな。部屋に入るか」
俺が香織の横顔を見ながら話し掛けると、香織はいきなり俺の方を向いて「え」、と言った。
「それ、何映っとん?気になるやんか」
香織は不思議そうな顔で天体望遠鏡を指差してきた。
「今は特に何も映ってないよ」
「どういうことやねん?」
「もっと夜が更けると分かる、かもね」
俺はそう言って、ベランダの出入口の方に香織の身体を向けさせた。
「付き合わして悪かったな。コーヒーでも淹れるよ」
俺は香織の背中を部屋の方へと軽く押した。