団☆乱ラン【番外編】〜須具利家のシーズンイベント〜
「須具利さんが帰ってきた!」
仲のいいアルバイトのあきちゃんが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「なにが?」
きょとんとしてそんな風に答えるあたしに
「…円藤さんに手込めにされたって聞いたんですよ!?」
あたしの耳元でひそひそ話すあきちゃん。
「は?なにそれ?」
「えっ?違うんですか?──だって、所長が……。」
来客用のソファーに座り込んでうつらうつらと昼寝中の所長をチラ見しながら、あきちゃんが囁く。
「「…………………」」
─あんのぉ、古ダヌキが!
「大丈夫だよ?お昼奢ってもらってただけだよ?」
「え?お、奢りって…あの円藤さんがですか?!」
「うん。そ。お寿司奢ってもらったのよ。……あー、美味しかったよ“時価のウニ”最高だったよ?」
あたしの言葉に、イナバウアーのような見事な仰け反りを見せるあきちゃん。
「バレンタインのお返しなんだって!」
あたしは事務所中に聞こえるように言った。
女子社員の体がピクリと動く。
「あー!あたしもあげたら良かった!時価ウニ……!!」
イナバウアーから生還したあきちゃんが、スゴく悔しそうに叫ぶ。
「来年、あげたらいいじゃん?円藤くんきっと喜ぶよ?」
「そうですね、それにかけますっ!」
ガッツポーズで話すあきちゃん。
その姿を見て、闘志を燃やす女子社員達。
─面白くなりそうだ!
円藤には悪いけど
バレンタインの違った楽しみが増えたよね?
あたしは、ニヤリと微笑むと
「ごちそうさま。」
円藤の机に向かってそう言った。
海老で鯛を釣る了