dim.
 何かこの雰囲気を変えなくちゃって気持ちだけが先走って、
言葉が出てこなくなってしまう。

 仕方なく、私も助手席の窓を見つめた。


 外の景色を見つめながら 消え入りそうな声で言ってみた。

「ごめんね」

「……」

「ね?怒ってる? ごめんね、ホント悪気があって言ったわけじゃないんだけど…」

 窓から視線を移してみると…


「!?」

 まさか、寝てる??

 いや、ここで寝られてもホント困るんだけど…。

 
 肩をつんつんしながら呼んでみる。

「あのぉ…寝ちゃったのー?っていうかさっきまで怒ってたじゃん。」

「……。」

「こんなとこで寝ないで、ちゃんと家に帰ってから寝てくださ~い。」

「……。」

「まじで 寝ちゃったの?…」


 今度はほっぺをつついてみようと、手を出した瞬間

ものすごい勢いで抱きしめられた…。

「ちょ、ちょっと…。何するのよ!」

「これ以上何もしない。だから少しだけ。」

「いやいやいや… これはダメでしょ。」

「俺がいいんだからいいんだよ。」

「何その俺様的発言…。」


 きついこと言うけど、優しく包まれるのと頭をなでてくれるしぐさに

私の気持ちが少し揺らいだ。

 ちょっとだけ力を抜いて、直人の左肩に顔を載せてみる。


 ほんのりタバコのにおいがして、あの人のことを思い出した。



 
 
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