dim.

　電話の人が、ポケットからキーを取り出す。私はきょろきょろして車を探す。

　キーが向けられた先には、スポーツタイプの黒いワゴンが止まっていた。

「寒いから早く乗れよ。」
「うん。」

　慣れた手つきでエンジンをかけて車を走らせる。ほんの少しだけ、この人は私とは違う世界の人なんだと気付く。

「お嬢様、どちらまで？」
「お嬢様って…。」
「あぁ、そうだな。お子ちゃま、どちらまで？」
「言い変えなくていい！ん～～、どこに連れて行ってくれるのですか？じいや」
「ちょ…」

　笑いがこみあげてくる。
さっき会ったばかりの人に、こんなに普通に話してる。ずっと前からの友達みたいに。
　友達にすべては話せないけど、まぁこんな出会い方も悪くないのかな？なんて思えてきた。