恋のMELODY
―翌朝―
「ふわぁぁ・・・」
欠伸をしながら起き上がったのは柚だった。
隣では郁と紀代が気持ちよさそうに眠っている。
「ふふっ」
そんな2人を見ていると自然と笑みがこぼれた。
「そうだ・・・」
柚ははっとしたように着物の懐を探り出した。
「あった。良かった・・・」
懐から黒い蝶が描かれている簪を取り出した。
母上の形見・・・
この簪は母上がいつも自分の髪を結っていたもの。
死ぬ間際に母上が私の手に握らせたのだ。
私にとってすっごく大事な大切なもの。
母上は私が幼い頃に殺された。
それでも母上の顔はよく覚えている。
母上が死んでからは父上が私を大事に大事に育ててくださった。
その父上も・・・
昨日の戦で・・・
柚の目からキラッと光る雫がこぼれた。