恋のMELODY
「柚・・・様?泣いておられるのですか・・・?!」
寝ぼけていた郁が飛び起き私の隣にしゃがんだ。
郁の声があまりにも大きかったのかつられて紀代も飛び起きた。
自分の顔に手を当てるとぐしゃぐしゃに濡れていた。
「大丈夫・・・きに・・・しない・・・で」
必死に笑顔を作ろうとしても涙が邪魔してうまく笑えない。
声も・・・やっと聞き取れるくらいの震えた声しか出ない。
「姫様・・・!!」
郁はギュッと抱きしめてくれた。
いつもよりうんと強く。
「・・・」
紀代は気を使ったのか黙って部屋を後にした。
ガラガラ・・・
静かに廊下に出ていった紀代・・・。
「柚姫様・・・申し訳ございませぬ・・・」
襖にもたれかかり、誰にも聞こえないような小さな小さな声で紀代は呟いた。
「でも・・・私にはどうする事も・・・」
紀代の目にはうっすら涙が浮かんだ。