恋のMELODY
・満月が照らす庭で
「郁、行こう」
郁に向き直りニッコリ微笑む。
郁はこの時気づいた。
柚の寂しげな笑みに――。
無理をしている笑みに――。
「柚様…」
誰にも聞こえないような小さな声で呟き、柚の後を追う。
「…」
その光景を紀代は静かに見つめていた。
「郁…」
「はい!」
柚は後ろからついてくる郁に振り向きもしないで話しかけた、
郁は返事をしながら柚の隣に並ぶ。
「私…永朋様との祝言…おうけすることにする」
郁の表情は変わらなかった。
そんな気、してたから――。
「柚様は…それでよろしいんですか?」
「えっ…!!」
郁の言葉に身体がピクッと揺れた。