ニートを引きずり出せ!!

〜次の日・車内〜

黒のﾎﾞﾃﾞｨに滑らかな砂を散りばめたようなラメが太陽の光を吸収して妙な輝きを放っているﾐﾆｸｰﾊﾟｰに武田と助手と富澤と山田が乗り込んだ。

助手席に座っている、富澤が武田の姿を見て眉間を寄せた。

｢そのファッションセンスは何ですか??」

武田は袖がかなり長いﾛﾝTにタイトなｸﾗｯｼｭｼﾞｰﾝｽﾞ、健康ｻﾝﾀﾞﾙという統一性の欠片もないﾌｧｯｼｮﾝで首には犬用の革製首輪を巻いているのだ。

「今日のテーマは『野良犬と御主人の出会い』なんだよ、惚れるなよ〜富澤君。」

武田は昭和初期を感じさせるようなｳｨﾝｸを富澤にﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄした。

｢武田さん……気分が悪くなってきました。」

富澤はわざとらしく口に白く透き通った手を当てて嗚咽する真似をした。

｢富澤君……まさか、陣痛かい??まったく盛んな女性だな富澤君は」

武田の発言を聞いて富澤は無表情な顔で鞄から、きらりと怪しく輝く鉄製の塊を右手に装着しようとしている。

｢富澤君、女性がメリケンサックなんて物騒な物を着けたら駄目だよ」

武田の問いかけに富澤は耳を傾けずに、武田に殺傷力のある一発をお見舞いしてやるために素振りを始めた。

その切れ味のある富澤のﾊﾟﾝﾁﾗｲﾝを特等席で見た武田は冷や汗が止まらなくなった。

｢富澤君、そろそろ依頼人の家に着くから、そのメリケンサックを鞄にinしてくれないかい、それに事故ると依頼人の家に行けなくなるし、三人とも死んじゃうから」

すると富澤は軽く舌打ちをしながらﾒﾘｹﾝｻｯｸを手から外して鞄の中に入れた。

武田は富澤がﾒﾘｹﾝｻｯｸを鞄の中に入れたのを確認して安心したが、富澤に舌打ちされたことに対してはからなりへこんだ。

そんな武田がﾊﾞｯｸﾐﾗｰに眼を向けると山田は『あゆたんのカラクリ喫茶』という写真集を気持ち悪いぐらいに顔を近づけて見ていた。そんな山田を見て、武田はなんとなくｲﾗｯとした。