初雪の日の愛しい人[短編]
初雪の日の愛しい人
「なんでいっつもそうなの!?」

 本意ではないのに、声がうわずってしまった。
 当然のように涙が溢れてきて、自分の顔が赤くなっていくのがわかる。

 …格好悪い。なんだって一番肝心なときに、泣いてしまうんだろう。

 いつも、いつも。

「俺は、こういう人間だし。わかっててつきあってたんじゃないの?」

 皮肉めいた笑みを浮かべる彼に、憎しみに似た怒りがこみ上げる。

 だけどあたしは言ったのだ。

 あのときあたしは、「それでもいいから傍にいる」と。

 あたしが「彼女」ならそれでいいと。

 …実際、「彼女」なんて肩書きはなんの意味もなかったのだけど。
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