現実アクションゲーム
怒りに満ちた表情で泳ぐ蓮。


しばらくして、気づいた。


岸に、誰かいる。こちらに向かって、薄っすら微笑んでゆっくり手を振っている。


「……ん?」


だんだん岸が近づいてくるにつれて、人影がはっきりしてきた。


「あれって……」


灰色の、ホームレスのようにボロボロで見覚えのある服。それに、あの冷たい目……


蓮は、岸に着くと、その男に近づいた。


「お前、確か……スタート地点で会ったよな。拓馬?」


「そうだ。蓮……と言ったか?」


「あぁ」


「来い、蓮」


拓馬はボソッとそう言うと、背を向けて歩き出した。わけがわからず、拓馬に続く蓮。


「どこ行くんだよ?」


「水の中へ潜る」


「は?」


拓馬は岩影からタバコのようなものを取り出すと、蓮にポイッと捨てるように渡した。


「それを吸え」


「……何だよ、これ?」


「いいから、早くしろ」


「タバコなんか吸ってる暇ねぇんだよ!」


「タバコじゃない。それは酸素だ」


「……は?」


ますますわけがわからない。蓮は深呼吸すると、拓馬にゆっくりと言った。


「拓馬、順に説明してくれ。何で今、俺がタバコを吸わなきゃなんねぇんだよ?」


その蓮の言葉に、拓馬はタメ息を一つ漏らすと、説明を始めた。
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