現実アクションゲーム
「おい、拓馬!無理だ!」


涙目で拓馬に叫ぶ。


「そうか。なら、ここで二人とも死ぬしかないな」


笑いながら言う拓馬。


マジだ。少しも、死を恐れていない。


そのとき、視界に入る。


ゴゴゴゴゴ……


だいぶ、天井が近づいてきている。


このまま跳ばなければ、天井に押しつぶされてマグマに入るだけ。


「畜生……」


右だ。何も理由はない。


ただ、右だ。俺は、そう思う。


これは直感なのか、それともプレイヤーの指示なのか。


とにかく、右になら跳べる。


よし、右に跳ぶ!


「……」


ダメだ……跳べない……


乗っているブロックに、ヒザから崩れた。


怖い。心臓がバクバクする。


普通の精神状態なら、跳べたかもしれない。だが、今は違う。跳んだからと言って、この先に何が待っているんだ……


クリアしても、死ぬかもしれない。俺は、所詮CGだ。


このゲームを楽しませるだけに生まれてきた存在……


……いや、違う。


まだ、CGと確定したわけではない。


確かに、その可能性は極めて高いかもしれない。


だが、もしかしたら、違うかもしれない。


少なくとも、希望はある。


生きていれば……生きていれば……


蓮は顔を上げると、歯をくいしばって震えながら立ち上がった。


「お、やっと行く気になったか」


その拓馬の言葉がいちいち勘に触る。


だが、それと同時に閃いた。
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